2ヶ月ほど前、Wombという写真雑誌が届いた。
あまりなじみのない単語だけれど、Wombは英語で[子宮]と
いう意味である。子宮というのは、とても女性性を強く感じさせる。
しかも「womb」のこのbは無声音で、ウォンブではなく「ウーム」と
発音する。知らなかったらきちんと発音できない。
写真の雑誌になぜそんな大胆な名前を付けたのだろうと思った。
このwombという雑誌は、写真評論家の鳥原学さんが監修されていて、
植田真紗美さん、川崎璃乃さん、田口ひさよさん、布川淳子さんと
いう4人の女性写真家による季刊写真誌で、この4人は写真専門学校
の同級生だそうである。
そもそも写真家とは、協調性がなく、誰かと何かを一緒にやるなんて
ことできないはずではなかっただろうか!
私の記憶に、写真家同士で集まって、何かを一緒に作り上げたことが
あっただろうか!(少なくとも私は呼ばれてない!!)
お金がないとか、忙しいとか、難しいとか、自分に協調性がないとか、
そんなことを言い訳にして、私はいったいこれまでどれだけのことを簡単に
あきらめてきたことだろう。
そんなことを思って、尊敬と羨望のまなざしでこの雑誌を見たのであった。
ところで「Womb」といえば、
私がはじめてWombという単語を知ったのは、ニューヨークのヨガ
教室であった。そのヨガ教室は、一つの教室にきちきちにマットを
敷いて100人くらいが集まるほど人気のある、熱気むんむんのヨガ
クラスだった。
私は教室を間違えたかなと内心思いながらも、静かに自分の筋肉を
見たり、前の人のタトゥに見とれたりして待っていた。
私の隣の男性は、海水浴にでも行くかようなビキニ一枚で、
滝のような汗をかきながら座禅を組み、お釈迦様のように見えた
くらいである。そのうちクラスが始まり先生があいさつをして、
いきなり「Wombは人間が生まれるところです。つまり神秘であり、
すべてのはじまりであり、創造の源なのです。ナマステ〜」と言って、
シャンティがはじまり、そこからひたすら瞑想が始まった。
先生は子宮に声をかけたり、子宮を抱くように意識しながら
長く細く呼吸するようにと促した。
子宮について、いや、自分の臓器について、どこにどんな形で
何があるのかなど考える機会など、いままであっただろうかと困惑
しながらも、自分の体に思いを寄せた。
これまでの人生で、私が子宮に話しかけたのはもちろんそのときが
初めてである!
ちょっと変わったヨガだなと不安だったが、そのうち私は集中しはじ
めて自分が冴えてくるのがわかった。
その先生は、「精子と卵子が出会う、そのミラクルをイメージしてえ〜」
「女性は子宮に(男性は男性のものに)意識を集中して呼吸ぅ〜」と、
合間合間に、リードした。
そして最後に、子宮で呼吸することは、更年期障害にも不妊治療にも
絶大な効果を発揮する、と力説した。それだけでなく、
「womb、それはアートだ。クリエイトだ!」とも力説していた!
そのとき、私はといえば、「これはまさにアメリカだ!」と実感し、
むくむくと自分の中にわき上がる前向きなエネルギーに、陶酔していた。
そのときの感覚は例えようがない。
(ふだん私は決して前向きで元気のいい人間ではないから。)
強いていえば、自分という人間がとても特別に思える感じかしら?!
「信じるイコールすばらしい」の世界を体感したのである!!
あのエネルギーの感覚が、ヨガの極意なのかもしれない。
そのクラスは、一回でやめてしまったけど、ぜひまたあのまぼろしの
エネルギーに包まれてみたいと思うことがある。
(。。余談になりました。)
さて話を雑誌のwombに戻すと、
あのときのヨガの先生の「womb、それはアートだ。クリエイトだ!」
という言葉を思い出して、この雑誌のネーミングに納得したのである。
この雑誌のメンバーのひとりである布川淳子さんにお会いしたことが
あるのだが、こんな美人が写真をやるのはひきょうだ!と思うほど
清楚で美しい人だった。
それぞれが別の仕事を持ちながら、自分の写真を続けていくことは
並大抵のことではないけれど、同志の仲間がいるってすばらしい。
この4人の女性の共同作業をとてもうらやましいと思うのだった。
もうすぐ4号目が発売になるそうだが、
いま発売中のWomb Vol.3 では、田口ひさよさんの特集である。
そして、[月をよむ 光をよむ]のコーナーでは、松濤美術館の学芸員で、
美術評論家の光田ゆりさんが、私のLife Studiesの展評を書いてくださった。
私はその展評を、枕のなかに入れて寝ている。
私の日常生活は、とても写真家とはいえないほど、写真とかけ離れた
ところにある。そんな生活の中で、自分の写真はもうだめだと思うこと
が何度もあるが、そんなとき私は枕の中をのぞいては、勇気をふりしぼって
自分に写真を引き戻す。
私が写真家でいられるのは、私に写真家としての意識を持たせてくれる人
がいるからだと思う。
Wombをよなよな眺め、フレッシュなエネルギーを目の当たりに
しながら、私はどんな写真家になりたいのだろう。。。と繰り返し
考える。繰り返す私もまた、フレッシュだ。
ところで、
みなさんは枕の中にどんなものを入れていますか?
私の母は、ちょうどいい固さの枕が見つからないといって、
台所にあった砂糖の袋をふたつ重ねて枕にしています。
ベッドの上に砂糖の袋があるのは、なんだかこわい感じがするのは、
私だけでしょうか。
(また余談になりました。。)
今日何が言いたかったかというと、、、、
いい写真と、いい文章、意気のある写真の雑誌「Womb」を
ぜひ購読してみてください!(光田ゆりさんの展評も!!)
vol.4は、8月20日発売だそうです!