街を歩いていてふとショーウインドーに映った自分の姿を見て
なんだか無性に悲しくなった。
これを着ると白い妖精みたいだと思っていた真っ白いコートも
すっかり灰色にくすんでしまいみすぼらしかった。
そんな自分を見つけてふいにオイオイと声をあげて泣きたくなった。
誰かに背中をさすってもらいたい。
誰かにあたまをなでなでしてもらいたい。
なぜかきょうだけは5才の子供のように訳もなく泣いてだれかに
だっこしてもらいたくなった。
これがいわゆるホームシックというものなのかもしれない。
ひとりぼっちで寂しい、かといって人に会うと極端に疲れるし、
鏡で自分の姿を見るとなんともみすぼらしくて小さい。
何もうまくいかないように思える。
なにかにとても疲れているんだなと思った。
ただただひとりぼっちを感じるだけ。
この一週間はそんなスパイラルに落ちてしまった。
なにもしたくない。
こんなときは家でだらだら回復を待つしかなかった。
この家主の本棚にあった「ダライラマ、こころの育て方」
や「人間失格」太宰治などいろいろ試したがどんな本も文字を追っても
頭に入らず全部途中でギブアップ。
最後に向田邦子「思い出トランプ」に落ち着く。
どんな小さな人生にも哀しいドラマがある。
人間っていろいろあるんだなー。
どうしようもない気分でベットにうつぶしてひとりで大泣き。
そして「ちっちくーん」と昔飼っていた犬の名前を叫んでみた。
(小説とはまったく関係なし)
単純に泣くことができて満足したんだと思う。
真夜中に起きてうどんを食べて寝て起きたら、
またお腹がすいていた。
けだるいながらも、真剣に野菜を切ってスープを作り始めたら
だんだん元気になってきた。
料理はいつもと違う脳みそを使うらしい。
わたしがホームシックと戦っているあいだ、NYは春のように暖かい
一週間だった。
きょうからまた冬に逆戻り。雨。