「奇跡の人」というお芝居を見にいった。
感動して泣くよ〜という前評判だったので、期待大だった。
一緒に行った奥さんたちは、手を拭く用と涙用のハンカチを2枚用意してきたの
と言って見る前から号泣の準備をしていた。
ハンカチを用意しなかった人に、誰かがアドバイスしている声が聞こえてしまった。
「ハンカチを忘れた人は涙が出たら〜、
そのまま涙を化粧水代わりにして顔をパッティングするといいんですよ!
涙は化粧水よりももっと肌をきれいにする天然保湿成分なんですから〜!」
と、よく聞くとそれは自分の妹の声だった。
この人こんなのうてんきでいいんだろうか。
一気にざざーっと血圧が下がり
おかげでわたしは最後まで一滴も涙が出なかった。
3時間半という長い演劇のあと、芝居に酔いしれた女6人の食事会となったとき
涙を出さなかったのはわたしだけということが発覚。
自分に乾燥注意警報が出された。
もう飲まずに早く家に帰って化粧水をつけたほうがいいとひどいことを言われ、
やっとここで泣きたい気分に。
きのうひとりで「タッチ」のDVDを見たときには泣けたんだから、
乾いているわけではない。
この舞台のサリバン先生もよく泣いてはいたが、憂いのまったくない
サリバン先生だった。泣いてもしたたかというか、泣くんだけど笑い飛ばそうと
いう演出?が逆に痛々しさを誘うのだった。
それは鈴木杏だからなのか、演劇だからなのかわからないけど、
演じる方も観る方も両方かなりエネルギーを要するお芝居だったと思う。
声を出さずにその存在を表現するヘレンケラーの役は大変だと思ったが
さすがだった。