私が父とまだ心が通っていたころの話である。
父は幼い私をよくドライブに連れて行ってくれた。潮干狩りとか、山登りと
か、従兄弟のうちとか、おばあちゃんのうちとか、(そういったお金を使わ
なくてもよさそうなところ)へ。
オンボロ車の助手席に幼い私を乗せ、パカパカと煙草を吸いながら、
父は夕暮れの帰り道のラジオから流れる野球中継に熱狂していた
ものだった。
カープが打たれたら、「このばかー!!なにをしょうるんな〜!!」
と罵声をあびせ、カープが打ったら「よっしゃー!!やったでー!!」
と体をうならせてよろこんだ。
「あーこちゃん(=私のこと)が男じゃったら、カープの選手にしたのに
のう」となんども言っていた。
カープが勝ったときは「あーこちゃん、きょうはお祝いじゃけ、唐揚げ
でも食おうか!!」と気前のいいことを言い、レストランに連れて行ってく
れるのかのかと思ったら、スーパーに寄り道してお惣菜コーナーで買った
唐揚げを、車の中で二人ほおばったこともある。
まずしいけれど仲良しだった父と娘のしあわせな時間とは、あのときの
ことをいうのだろう。
そういうわけで子ども心にも、カープが勝つと父が喜ぶ、父が喜ぶと私も
うれしいと知っていたし、父がカープが好きだからというだけで、あたり
まえのようにカープファンとなり、それを疑うことなくここまできてしま
ったのである。
私が銀座でカープのマスコットガールに(勝手に)なった日
毎日持ち歩くティシュ
めいっこへのファーストプレゼント
どんなに弱小と言われてもいつも切実にカープの味方であり、持ち歩く
エコバックは無意識にもカープ特製の赤いエコバックしか持たない律儀
な私であるが、最近、私はカープがセリーグかパリーグかさえ知らない
ことに気づいた。
そして自分はほんとうに赤ヘルファンなのか、自問することになった。
しかし、父の刷り込みだと気づいたときには、もう遅かった。
子どものころしみついたものは、もはや深く濃いすぎた。
あのときラジオから流れていた「それ行けカープ」を聴くと、笑いがとまら
なくなり、全身に熱い血が巡り、大声で歌いたくなる衝動を押さえられない
自分がいるのだった。。。
野球を知らなくても、やはり私は赤ヘルが好きなんだ、と再認識したの
である。
私の血潮ともいえる「それ行けカープ」の歌を、少し紹介してみよう。
「空を泳げと天もまた胸を開く」…… (鯉だから空を泳ぐんだなー。)
「今日のこの時を確かに戦い」…… (負けても「確かに」戦うんだな〜)
「勝ちにいくのが選ばれた者の運命」……(選ばれたいな—)
「その意気愛して見守るわれらの」……(男気があるなー)
「あしたへ続くきりのない夢であれ」…(まさに、夢だよなー)
と、考えるところがもりだくさんの歌なのである。
これを聴いたらみんながカープファンになるんじゃないかと
いう恐れさえある、すばらしい歌なのである。
ぜひ聴いてみて〜!
https://www.uta-net.com/movie/7271/
そんな私が、先日生まれてはじめて、球場へ行き野球観戦をした。
言わずと知れた「広島ズームズーム球場」(!!!)である。
しかもロイヤル席をもらったのである〜!
盛り上がったのは言うまでもない。
「はじめての球場」、「はじめての応援」、そして「カープ対横浜」
わたしはあまりにも興奮しすぎて、
カメラの露出をあわせるのを忘れて、ほらごらんください。このとおり。
せっかく勝ち試合に立ち会ったと言うのに、記念の写真がこれとは…….
自分を疑いたくなった。
その日そんな赤ヘルロイヤル席のどまんなかで、ひとり黄色いユニホーム
を着て堂々と座っているおじさんがいた。
勇気がある。ありすぎる!
ぎゃくに好きになったくらいである。
その方は、そのユニフォームに似合わず品があり、まわりに気を使っ
て自分のおつまみを配ったり、しまいには私にもさきいかのパックを
まるごとくださった。こんなあからさまな敵から、さきいかをもらって
もよかったのだろうか。
いろんな人がいるんだなと、球場で野球を見る醍醐味というのを味わっ
た気がした。
その日私を球場に連れて行ってくれたユーリ先輩は、
私がなにか質問をするたびに「亜弥さん!!ほんとに何も知らないんです
か??。。。野球って言うのは三つアウトを取ったら交代なんです!!
だからいま交代したんですよ!!」「野球には攻めと守りって言う言葉が
あって、カープの選手がバットを持っているときは「攻め」、ちらばってい
るときは「守り」って言うんです!うんぬんかんぬん、、」
といろいろなルールを教えてくれた。
ものすごいカープファンだと思って連れて来たら、野球を何も知らなかった
というわけで、さすがのユーリ先輩もしまいにはいいかげんにしろっと
いいたげな顔だった。
そんなユーリ先輩が熱く説明をしてくれているうらで、私が何を思っていた
かというと、ウグイス嬢への嫉妬であった。
私は広島球場のウグイス嬢になりたかった。(今でもなりたい。)
ユーリ先輩はユニフォームからタオルから応援棒(音を出すもの)から、
完ぺきに揃えていて、選手の名前もぜんぶ知っていた。
そして「ここにきたら絶対これ!」といって、「カープうどん」という
ものまでごちそうしてくれた。
なかなかおいしかった。
そんな献身的なユーリ先輩を見ながら、こういうところはまさに彼氏と来る
べきにふさわしいところではないか、と思った。
情熱の赤い球場の空に、ユーリ先輩と私に幸あれと願ったのである。
今年こそカープが優勝するよう、私がんばります!!
応援のグッズ持参
暴走族風の刺繍をいれていると思ったらお経を刺繍していた人(なぜに〜!)
カープ女子増殖中の今、ロイヤル席で観戦なんて贅沢すぎる!
彼氏と行くとケンカになる。
ビールとヤジで応援するのさ♪