2011-09-24

更年期とソーダ割り、と黒田さん

ある朝、目が覚めたら、目が回って、あれれ?

という変な気分になった。

そして、 もう一度立ち上がろうとすると

またぐわんぐわんする。気のせいではなかった。

この得体の知れない体調不振に恐怖を覚えた。

決して気持ちが悪いのではない。ただ目が回るのである。

そしてだるい。そして顔が青い。

この症状はどこかで聞いたことがあった。

まさか、更年期と言われるものではないだろうか、、、(もちろん若年性)

いや、もしかして名前も知らないこわい病気だったら、、、

病院に行くのがこわい。 病名を知るのがこわい。。。

でもとりあえず赤々舎に行かなければ。

お客さんが待っている。

と、ぐるぐるするのをがまんして、わたしは赤々舎に急いだ。

電車の中でわたしは前の日のことを思い出そうとしていた。

前の晩、わたしは赤々舎で写真家の黒田光一さんと頭山ゆう紀さんと

松本君で、飲んでいた。(話題は主にコイバナだったはず)

焼酎1本と、ホッピー。

(*これがいちばん安上がりに飲む方法だそうです)

「あれくらいで二日酔いになるわたしではないはずだが、、、」

「こんな症状ははじめてだし、、、」

と、そのとき、気づいた。

きのう、そう、焼酎がなくなったとき、黒田さんに、日本酒のソーダ割りを

薦められたことを。

黒田さんは、「実際いまこういうカクテルが流行っている」

と得意げだったが、それはそこにいるみんながはじめて飲む飲み物だった。

そして味は、なにかが足らないような、パンチのない味であった。

それはそうだろう。日本酒を炭酸水で薄めて飲むんだからぁ〜!!

まさか、この体調不良はあの日本酒のソーダ割りのせいだったのか?!

このめまいが、若年性更年期ではないことがわかったとたん、

心のくもりが晴れた。そしてすぐ二日酔いの薬を飲んだ。

みなさーーん!!

日本酒のソーダ割り、

かなり危険です!!


黒田さんと飲むときはこのように深いため、すでに「竹馬の飲み友」の

ような気分ではあるが、実は黒田さんと一緒に酒を飲んだのは、まだ2回。

でも黒田さんにはいつもお世話になっていて

今回の展示設営もパーティもふらりと来て手伝ってくれた。

黒田さんはひょうひょうとしているが、なにかと心遣いがきめ細やかで、

心持ちがよくて、“だまってエプロンをつけたお父さん”のように頼もしい。

私が信頼する写真家のひとりである。

そういうわけで、急きょ(なにもかも急きょ)

展示の最終日に、姫野さんと黒田光一さんと3人で夢のトークショーが実現した。

赤々ギャラリーの最後ということもあって、

たくさんの人が来てくれた。

打ち合わせもなく、まるでそれが当たり前のように三人ともお酒を

片手に会がスタートした。

3人でほろ酔いのトークショーはとても楽しかった。

よく考えたら黒田さんと写真について語るのは初めてなのであった。

黒田さんのモツ煮に対するこだわりを見ても分かるように、

そこには女にはわからない美学がある。

それは最大のロマンを秘めた「弾道学」であり、「男道学」でもある

と思うのだ。 だからこそ、黒田さんの視線は女々(めめ)しい。

(これはモツ煮の話じゃなくて写真の話でした)

つまり、美学もロマンも女々しいも、男に使われる言葉なのであり、

わたしにはさっぱりわからないのである。


最近私は、すごく女性らしい心を持った女の人が、自分のことを「オレ」

というのを聞いて、美しすぎたり、弱すぎたり、やさしすぎたり

純粋すぎたり、というのは、それを隠すためにいっしょうけんめい

にならなければいけないのだなとふと思ったことがあったのだけど、

黒田さんの写真を見てても思う。

この人の写真がまっすぐに見えないのは、まっすぐなのを隠しているから?

さて、こんなことを言ったら黒田さんはどういうでしょう。

「いやあ〜ハズレだね」とかなんとか、言いそうです。


トークショーでは、いろんなこと学んだ。

姫野さんも黒田さんも純粋で感覚がとてもするどい人で

さしぬきならない。

そしてロックンロールというよりピアノ狂想曲のような情熱がある。

来てくださったみなさんもあたたかかった。

わたし以上にわたしの写真を真剣に見つめてくれている人がいる。

だからわたしもいつも背筋を伸ばしていたいと静かに熱く思ったのだった。

最終日、こんな気持ちを持ててうれしかった。

ありがとうございました。

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